まちにわ ひばりが丘 施設予約

【東伏見・岡庭建設 #3】「100年後も知っていてもらえる会社になろう」|AERU PEOPLE特別編

2018.03.29

地域で活動する企業さんや住民の方々にインタビューし、その取り組みの裏にある想いやメッセージをお伝えするAERU PEOPLE特別編。その第1弾となっている今回は、西東京市で約50年愛され続けている工務店である岡庭建設さんにお話を伺っています。

前回記事の#2では岡庭建設さんの住まいづくりに伴い生まれている、地域にお住まいの方々との温かなつながりについてお話をお聞きしました。

前回までの記事はこちら。

今回の#3で最終回。今回は東日本大震災を契機に動き出した防災に関する取り組みや、これからの岡庭建設のビジョンについてお聞きしてきました。最後にはお知らせもありますのでお見逃しなく!

お話をしてくださったのは、「池田隊長」こと専務取締役の池田さんです。

池田浩和 (いけだ ひろかず)

岡庭建設(株)専務取締役 一級建築士
同社の設計を主に携わり、太陽熱、長寿命、木を活かしたエコ住宅を 手掛けている。
2010年にはグッドデザイン賞、2015年キッズデザイン賞、2016年ウッドデザイン賞、2016年東京都多摩産コンクール優秀賞他受賞。
(社)JBN・全国工務店協会、(社)東京家づくり工務店の会、(社)全木協東京都協会 、(協)もくようれん他、工務店団体等の役を務める。

震災から始まった木造の応急仮設住宅

──
今インタビューをさせてもらっている、ここ「R-eco House」も、お話を聞いた中では、地域のつながりを生む場としてイベントでも使われているとのことですが、他の役割、取り組みとしてはどういったものがあるのでしょうか?
池田浩和(以下、池田)
実はここはつながりを生む場としての役割の他に、災害拠点の役割もあるんです。

そもそも防災は、予めどのぐらいの規模で、影響はどれぐらいでっていう予測を立てて未然に防いでいくものですが、そういった地震や台風、はたまたテロといった脅威というのはもしかしたら私たちが生きている間に起きるかもしれないし、起きないかもしれない。でも、将来起きうる可能性としてはゼロではないんですよね。

──
危険性としては様々なことが考えられますよね。
池田
災害が起きた時には被災者が出る。被災者が出てしまった時に仮設住宅が必要になりますが、先の熊本地震にしても東日本大震災にしても大手の建設会社が鉄板で仮設住宅をたくさんつくっているんですね。大手の持つスピード感が被災者を助けている面はとても大きいのですが、反面、大手がつくるとなかなか地域の大工や職人が参画できなくて、地元にお金が落ちないんですよ。

なので被災した時の工事でも、より地元にお金が落ちる仕組みがつくれないかと考えて、東日本大震災の時に、国と協議し全国木造建設事業協会(全木協※1)という、団体を立ち上げ「木の仮設住宅」を手がける事ができるようになったんです。私もその工務店団体の一人でしたし、現在は微力ながらも理事を努めております。

※1 全国木造建設事業協会は、全国3000社の工務店団体『JBN・全国工務店協会』と建設職人60万人の団体全建総連の連合体

木でつくるとなると、地元の木の材料を使って、地元の職人や地域の人たちと一緒に仮設住宅をつくる、地産地消です。それにやっぱり住む人のことを考えると、暑さ寒さ対策も重要と考られます。特に東日本大震災の際は、東北地方でかつまだ雪がちらついていた時期でしたから。

東日本大震災の時に東北に建設した木造の応急仮設住宅。(岡庭建設webサイトより引用)

──
冬場は特にそうですよね。
池田
こうして断熱材がしっかり入ったあたたかい家をつくってあげて、被災している人を少しでも喜ばせようという取り組みを東日本大震災を機に全木協が始めました。実はこういった動きは各自治体と協定を結んでないとできないんです。なので2011年を機に順次、全木協の各地域団体が地方自治体と協議交渉を手がけ協定を結んでいきました。

私は現在、全国木造建設事業協会の東京都協会の会長を担っているものですから、東日本大震災以降、東京都と交渉をし続け2013年の7月11日に全木協が災害協定を結びました。その結果、東京エリアでもし災害があった際に木造仮設住宅を建設するにあたっては、私たち岡庭建設が代表主幹事工務店、いわゆる司令塔になっているんです。

──
とても重要な役割ですね。
池田
これは誰かがやらななければならない役割でしたから、大変ではありますが現在も全木協東京都協会として東京都と意見交換をしたり、定例会や勉強会を開催したりと様々な活動の基点を手がけています。

そういった木造の応急仮設住宅をつくらなくてはいけない時もありますが、地域をもう少し平時の時点で災害を意識できるような環境をつくっていくべきだなとも思っています。地域のつながりによって災害時においても強くてしなやかな街になっていくイメージですね。

ですから、例えば弊社が実施している「ツナガル」のようなイベントを機に、災害時の備蓄品リュックを最低限一家で一つ用意するような習慣になったら、被災した時に食料が足りない問題も少し減るかもしれないですよね。

──
楽しいイベントで交流が生まれていることで、実際は防災や減災につながっていることもありそうです。
池田
そうなんです。なので何か地域で災害意識を高めていく取り組みも、あまり窮屈にせずに伝えていくことができたらなあと考えていました。

 

耐震性能は1.5倍

池田
R-eco Houseの話に戻りますが、国の国土強靭化という取り組みがあるんですけども、国と連携した民間団体の中でレジリエンス住宅委員会と言うものがあります。私も委員を仰せつかっているのですが、災害が起きた時のためにこれからの住宅はどうあるべきかということを検討しています。

私が工務店代表で、大手住宅メーカー代表がいて、いろいろな学識者が入りながらレジリエンス住宅というものが検討されたんですが、大手の住宅メーカーは我々のような地域工務店では出来ない手法も多いんですね。例えば、地震が来たら家が宙に浮くシステムなんかもあったり。

──
それはちょっとイメージできないです(笑)。
池田
凄いんですよ。ですけど、家を浮かす機能だけで多額の費用がかかったら、大衆的にはなかなか家はつくれないなあと思ったりします。誰でもつくれて、それでいてちょっと災害時に工夫されているような家ができないかということを考えました。

そこで、平時は愉しく過ごせて、有事には活躍できる、というコンセプトでできた家がこのR-eco Houseなんです。

一見するとどう災害に対して役立つのかと思うかもしれませんが、R-eco Houseの耐震性能は建築基準法で定められている耐震基準に対し1.5倍の強さになっているんです。2016年の熊本地震のときに、熊本の仲間たちが一生懸命に仮設住宅をつくったのですが、彼らが以前に手がけてきた耐震性能を1.5倍にした住宅は、被災地での本震、余震でも建物が倒れてないんですね。

こういう事例を聞いたり見たりした経験を踏まえ、弊社の住宅も1.3倍程度から1.5倍まで引き上げる事にしました。建築基準法の1.5倍の耐震性能を、性能を評価する制度等でいうと「等級3」(等級1が建築基準法、等級2が1.25倍の耐震性能)と位置づけられていて、近頃では消費者様たちの中でも耐震性能の一つの目安にもなりつつあります。

池田
R-eco Houseではその耐震性能を高めている点と、災害備品をストックすることも特徴ですし、薪ストーブもあります。薪ストーブは冬の生活で暖をとれるんですが、何より電気を使わないので、災害の時には炊き出しで使えるんですね。私たちは工務店なので材木がたくさんあります。乾燥材を使ってみんなで暖をとってもらい、炊き出しができればスタッフもここを拠点に活躍できるかもしれない、と考えています。

あと、ここの建物は太陽光発電と太陽の熱を利用しています。今日ですと晴れていて発電しているので、おそらく今この部屋で点いてるライトの電力は買わずにすんでいると思います。むしろ電力が余っているので売電しているかもしれません。

──
電力会社から買っていないんですか?
池田
はい、自家発電できるんです。余ったら売って節約にもなりますしね。また、太陽熱で水を温めながらお湯も作ってるんです。屋根をうまく利用する、環境共生の技術を生かして光と熱の両方のエネルギーを蓄える、ということなんです。

これはお金があればできる話ですけど、シンプルなところで言えば貯水設備、東京都って実はみなさんが流す下水の量と、降る雨の量がほとんど同じなんですね。意外と水が豊かな街なので、その豊かな地形を活かしてみんなで雨水を貯めていこうということで、この建物も3か所くらい雨水タンクとして雨水が貯めてあります。

──
雨水タンクがあるんですね。
池田
はい、タンクが外に置いてあって水を貯められるんです。というのも、東日本大震災の際に消防隊が水が無くて困ったという話があったそうなので、東京都や、少なくとも西東京市の家にはみんな最低限雨水タンクが付いてるよ、となればそれだけでも災害にちょっと強くなるんですね。水を貯めるという、ちょっとした意識ですが。
──
ちょっとしたことかもしれませんが、災害時には大きな意味を持ちそうです。
池田
あとは(R-eco Houseの)2階廊下の一部天井内に一部太い配管があり、洗面とかトイレに使う水道水は必ずそこを通っていきます。いわゆる水道管の途中が太くなっているような状態で、その部分に水道水が20リットルぐらい貯まっています。災害の時はその部分にホースを繋ぐと、生活用水がとれるようになっているんです。
──
なるほど。
池田
ちょっとした工夫で、備蓄用のペットボトル飲料水を用意しておくだけじゃなくて、家の天井裏にこういう仕組みを作っておくだけでも飲み水がキープできるし、トイレの水は雨水から持ってくればいいよな、というように考えられますよね。また、非常時の消火活動の一部にも利用できますし。

 

シンプルに良さが伝わる家づくり

池田
R-eco Houseは普段の生活(平時)でも何気に愉しく使えているんだけども、災害の時に(有事)もあって良かったなって思えるような、それでいてシンプルなものを目指しました。

さらには、こういった取り組みを伝えていくためには、人とつながっていて伝えていくことが大事だと思っています。なので先ほどお話した「ツナガル・プロジェクト」というイベントの一環として、LINE@に登録してもらって、普段はイベントの様子をお知らせしつつ、何かあった時には連絡がとれるような地域のつながり方も試験的にやっています。

──
居場所としての災害拠点でもありますし、有事の際の情報発信拠点でもありますもんね。工務店という枠組みにとらわれずに、様々な側面からチャレンジをされているんですね。池田だから今岡庭建設では一生懸命BCP(事業継続計画※2)の策定に取り組んでいて、有事の際に誰が仮設のあたりを担当するか、誰がOBの家を見に行くのか、それから困っている人たちに対してはどう対応するかっていうことを今定めていますね。

※2 内閣府の事業継続ガイドライン(平成25年度改定)では「大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)と呼ぶ。」と定義しています。

──
そうなんですね。いざとなった時の準備であったりとか、そもそも仕組み自体に有事の際の助けになるようなものを入れているってところに関しては、購入者の方も評価されているでしょうね。
池田
比較的、その家をつくるだけじゃないという考え方は、webサイトを見ていただいたりとか、友達経由などから知っていただけていると思っています。中には自分は岡庭で建てなかったんだけど、建てるならここがいいよと勧めてくれている方もいらっしゃるみたいです。

──
自分は岡庭さんのところで家をつくってないけれど、岡庭さんを紹介をする、というような愛され方はなかなか見かけないですよね。
池田
少なからず悪い事はしない会社だろうなってのは思ってもらえていると思っています(笑)。なのでスタッフ内でも「とにかく素で真面目にやろう」とは常々言っています。

──
確かに今日お会いしたスタッフのみなさんも、フレンドリーというか、話をするときの受け止め方だったりとか、話をしっかり聞いてくれる人が多いなという印象がありますね。
池田
そうですね。まあ全員が全員完璧じゃないんですけど、何かかっこつけて話さなきゃとなるとたぶんボロが出るんですが、素でいれば隠すことも無い。だからシンプルに喋って良さが伝わる、そういう家づくりがいいですよね。

社会問題にオールスターで取り組む

──
ここまで岡庭建設のこれまでのお話を伺ったんですけども、創業50周年にもうすぐなる中で、今どんなことをお考えですか?池田そうですね……。うちの会社は今、土地や中古住宅を扱える不動産部門もありつつ、設計だとかリノベーションだとかそういったこともできる。会社としては岡庭建設があって、岡庭リフォーム工房があって、あとは保険を扱っていたりだとか、様々なことをやる中で総合的に見てワンストップになりました。

次に考えるべきは、地域の社会問題に対してどう対応していくか、ということでしょうね。やっぱり常に地域には社会問題があって、それを解決できる存在って絶対必要だと思うんですね。

例えば、最近西東京空き家会議が始まりましたが、西東京が今すぐ空き家だらけになることはまず無いと思います。しかし空き家率は全国的に見ると今は13%オーバーになっていて、2030年頃には30%を超える(※3)とも言われています。

──
そうなんですね。
池田
その頃には西東京もおそらく空き家率が2割を超えてくるはずなんですね。だからもう空き家が当たり前に出てくるようになった時に急に困らないように活用法を考えておく必要があります。空き家が増えてきてしまうと街の衰退に繋がっていきますから、やっぱり街が衰退していかないようにそれをどう活用していくかということはずっと考えていますね。

それも私がJBN・全国工務店協会の立場的な関係で、国の空き家に関する情報を知る機会が多いものですから、その情報を知り、自社や地域の中でどうやって取り組もうかなと考えていたときに、今回西東京空き家会議の話が来たんです。

──
それはいいタイミングですね。
池田
しかし一口に空き家と言っても、「空き家とは何か」をよく分からないでやっても難しいので、最初は勉強会から始めることにしました。そこから、我々が街に対して何をしていくのかも徐々に発信していきながらやっていこうということになったんです。

これからは住宅ストック(既存住宅)に対する在り方が非常に重要になってきます。例えば我々が空き家を売るとか、空き家を利活用するために市内の店舗リノベーション経験者がちょっとリノベーションを手伝うとか。でも耐震が無かったらまずいから耐震性能のところは岡庭建設が手伝う、といったように。

チーム西東京空き家会議のメンバーの職種は様々。地域のメディア、デザイナー、空き店舗活用した飲食店、まちづくりオーガナイザーなどなど・・・(岡庭建設webサイトより引用)

──
なるほど、地域のまちづくりに関わるプレーヤーによる連携ですね。
池田
そうそう。だからこれは地域のオールスター(ステークホルダー)なんだと思うんですよね。この街は積極的な活動家、意識の高い人たちがいるのが資産だと思うので、その人たちと組んでプロジェクトを進めていけることが今回は本当に良かったなと思います。

まあこの取り組みについては実際はどうなるか分からないけども、私が持っている情報だとか、メンバーそれぞれが持っているノウハウを活かしていけば、たぶん地域に還元できる。これからは、いかに空き家に関する対策をするかで街の活性化につながってくると思うので、それが他の地域よりいち早く取り組めるんじゃないかと。

やっぱり「西東京にある家は全然メンテナンスされてないからヤバいでしょ」と言われるようになったり、「他の地域に住んだほうがいいね」となってしまったら嫌なので。住宅は残っていくものですから、それをどう維持管理していきながら資産にしていくかということを私たちは考えてますね。

──
空き家になる前にできることを今からやっていった方がいいですよね。
池田
そうですね。将来の街の在り方から逆に考えて、今どうした方がいいのか、どんなサービスが必要とされるのかを考えながらやっていきたいですね。

市民に100年後でも知っていてもらえるように

池田
今うちの会社でやっていることは、「岡庭建設」を知っている人が多くないという前提の考えから始まっています。取り組みをちゃんと知ってもらわなきゃいけない。

今、西東京市は人口20万人、約10万世帯です。10万世帯に岡庭建設を知ってもらうためには、人の入れ替わりもありますが、単純計算で年間1,000世帯に伝えていかないと100年後までに伝わり切らないんです。──そうなりますね。池田だから100年後でも知っていてもらえる会社になろうっていうのが今の目標ですね。なのでツナガル・プロジェクトもそうですし、庭之市の開催も市民まつりに参加するのにも意味があります。「そんな会社知らねえよ」「この街にそんな会社あったっけ?」って言われないような存在になろうと。

──
ただ単に広告を打てばいいっていう話じゃないですよね。本当にプロダクトとか、サービスだったりとか、そういう部分でメッセージを伝えていこうという姿勢でいることで、人づてに「あの人は信頼できる」となる。そちらのほうが確かな関係性な気がします。
池田
もしかしたら市民全員に伝わるのは200年後か、300年後かもしれない。この先の人たちができるかわからないですけど、でもまずその気持ちを持ってみんなが、今やっていることをやり続ける。

会社が、文字でビジョンがどうとか推すよりも、やっぱり私たちがこういうことを考えていて、やっているイベントの意味ってその一環だよねっていうのはたぶんスタッフにも伝わっているはずです。みんなが常に理解している。

──
そこが理解できているっていうのはやっぱり強いですよね。
池田
常にこういうことをミーティングの中では言いつつ、みんなで喧嘩してあーだこーだ言いながらやっているのは、住まいに関わる責任によるプレッシャーもあるからですけどね。

でもそういう喧嘩は大事なんです。喧嘩って一つの成長になるんですよね。恨み合っているわけじゃなく、互いに何かを良くしたいという考えがあってのことなんです。

──
今日は岡庭建設のスタッフのみなさんが日々真剣に取り組む事業のお話を聞けて、これからの岡庭建設にさらにワクワクしました。ありがとうございました!

————-

【お知らせ!】庭之市 おにわのまるしぇ volume.008開催!


2018年3月31日に庭之市 おにわのまるしぇ volume.008が開催されます!
出店店舗、ワークショップなどの詳細は庭之市公式サイト庭之市facebookページなどで随時告知されています。岡庭建設さんが取り組み、地域のつながりが生まれる一日。ぜひ足を運んでみては!

 

★庭之市 おにわのまるしぇ VOL.008★

 

●開催日時
2018年3月31日(土) am10:00〜pm16:00
※雨天の場合4/1(日)に順延

 

●場  所
おかにわリフォーム工房+駐車場
東京都西東京市富士町1-13-14

 

関連記事一覧

 

文/田中宏明、写真/浅見美沙(まちにわ師)
(この記事は、岡庭建設株式会社と製作する記事広告コンテンツです)

 

\国産の木、自然素材にこだわったリフォームなら、おかにわリフォーム工房へ!/