『北多摩戦後クロニクル』刊行記念イベント「地元は意外に面白い」レポート
2024.07.25
6月30日、ひばりテラス118で3人のゲストを呼んで「地元は意外に面白い!」というタイトルのトークイベントを開催しました。
『北多摩戦後クロニクル 「東京郊外」の軌跡を探る(言視舎)』は、2022年12月から2023年12月まで毎週火曜日に地域報道サイト「ひばりタイムス」が連載した記事を収録したものです。3月に刊行されると、西東京市、東久留米市の主要な書店の店頭にならび、早々と市内の図書館にも備えられました。
まちにわ ひばりが丘の事務所でも話題になりました。
「日頃よく行くいこいの森公園はこんな施設の跡地だったのか」
「保谷市と田無市はこんな位置関係だったのか」
勿論ひばりが丘団地のことも取り上げられています。
「すかいらーくの前身はピピ通りにあった食料品屋さんのこと」
「団地の暮らしが当時あこがれの的だったこと」
「どうしてそうなったのか、それからどうなったのか、掘り下げて知ることができた。」「だから、そうなっているのかと納得がいった。」
そんな声を聞き、このイベントを開催することにしました。
6人の執筆者の中から、飯岡志郎さん、片岡義博さん、そして「ひばりタイムス」編集長の北嶋孝さんをお迎えしました。3人とも北多摩に住む、元記者。今も地域報道サイトにかかわるジャーナリストです。
参加者は14人。まちにわエリアのマンションに住む人、パークヒルズひばりが丘の人、この本に掲載されたトピックの関係者、地域報道メディアの人。記事を書いたり、編集をした人の生の声をきいてみたい、取材の苦労ややりがいをきいてみたい、そんな思いをもって集まりました。
左から、北嶋さん、飯岡さん、片岡さん。ファシリテーターは「まちにわ ひばりが丘」事務局長の若尾さん。自身も「南沢生まれ、谷戸育ちです」と自己紹介しました。
「北多摩戦後クロニクル」は東京新聞をはじめとしてメディアでも取り上げられ、発売から3ヵ月の6月には増刷となりました。西東京市、東久留米市、小平市、東村山市、清瀬市の公立・私立の中学校43校、高校22校に1部ずつ寄贈されています。
学校に寄贈したことについて尋ねると片岡さんが答えました。
「『子どもと一緒に読んだら、子どもがとても興味をもって読んだ』という通販サイトのコメントがヒントになりました。若い世代に興味を持ってもらうきっかけになれば」という思いだったそうだ。「そんなに売れると思っていなかったので余るともったいないな、と思ったし」と付け加えると、会場の空気が緩みました。
参加者はゲストを囲むように座り、とても近い距離で話を聞きました。うなづいたり、笑ったり、感心したり。
地元西東京市の議会や市政の動きを注視し、住民の関心事を伝え続け北嶋さんが「西東京市の歌があってね、『大好きです西東京』っていうんだよ」と話すと会場にどっと笑いがおきました。
「大好きです西東京」という歌を知っている人も、知らない人も「なんか変だな」と思った笑いでした。参加者の中には後日、「あの曲について調べました」という人もいました。余程印象に残ったのだと思います。
「安心できる書き手ばかりだったので、自分は(この連載の)記事は書かないことにしたんだけどね」と言う北嶋さんが推すのは「保谷町が全国一斉学力調査を中止 新住民が支えた革新首長」というトピック。
全国から注目されるような決断が自分の住むまちで行われたことに感無量。毎日の暮らしに直結する市政の歴史を知るとまちの見え方がかわってくると思いました。
取材の醍醐味はどんなところですか」という問いに、飯岡さんは「取材するときは、書物をよみ、インターネットで情報を得て、予め『こういうことかな』と着地点を予想しています。ところが、現場に行って、人に合って話を聞くと全く違うことろに流れ着くことがあります」と話しました。「この本の記事はそうやって、必ず現場に出向いて取材したものです」と続けました。参加者からは手間も時間もかかった丁寧な取材であることに感嘆の声が。「だから読んでいて面白いのか」と納得しました。
時間の後半には質問や感想を参加者が述べることになりました。
「不動産屋に紹介されて西東京市を初めて知りました。どこにあるのかと思いましたがここに住むようになったので、少しまちについて知りたくなりました」
「住む前は縁がなく、北多摩という地域のイメージがなかなか浮かびませんでした。」
「昔の田無には理系の施設が多くあったことにあらためて気づきました。よく知っているところが取材されていて、情景が目に浮かびます」
「都心の勤め先と家の往復でなかなか地域のことを知る機会がなかったのですが、取材してみると地元にはすてきな人がたくさんいることがわかりました。地元への思いも変わってきました」
お互いの発言に耳を傾け、「あるある」「そうだよね」という表情が多く見られました。参加者の間にやんわりとした共感が生まれていました。
地元の戦後の軌跡を知るとまちの見え方が変わってくる、「地元は意外に面白い」というタイトルに「そのとおり」と共感するイベントでした。
まちにわ ひばりが丘事務局